韓国ニュートロブームのあれこれ
NEW(ニュー)とRETRO(レトロ)を組み合わせた新造語「ニュートロ(Newtro)」が韓国の最新トレンドとして注目を集めています。2018年頃から使われ始めたニュートロという造語は、ミレニアム世代の若者たちを中心にブームとなり、ファッション・音楽・美容などさまざまな場面に登場しています。1990年代〜2000年代をオマージュしたレトロスタイルが、現代社会の新しい要素と掛け合わされることによって、新しいジャンルとして生まれ変わったともいえます。
韓国で人気上昇中のシティポップもまさにニュートロブームの牽引役のひとつ。シティポップは1970年代〜1980年代に日本で流行した当時の最新音楽で、洋楽の影響を強く受けているのが特徴的です。都会的でどこか洗練されたポップソングは、今や世代も国も越えて人々を熱くさせています。とくに韓国では日本のシティポップをインディーズアーティストがカバーしたり、人気の韓国人DJがリエディット(再編集)をしたことで世界中に拡散されたりと注目度が非常に高いのです。
K-POP界のニュートロ NewJeans
シティポップだけでなく、K-POP界にもニュートロの新アイコンがいます。5人組ガールズグループ「NewJeans(ニュージンズ)」です。新しいのにどこか懐かしい曲調とMVは、世代を超えて好きになる要素が満載。
そして彼女たちのファッションにも注目が集まっていますよね。彼女たちのどこかエモーショナルな空気感と、韓国の1990年~2000年代のY2Kファッションが絶妙なまでにマッチしているのがポイントです。ニュートロを体現したアイドル「NewJeans」が身につける衣装はハッキリとしたカラーで、一見デザインがよく分からない形状や絵柄も多いです。しかし、一方で制服感のある衣装は懐かしさもあります。
デビュータイトル曲「Attention」のプロモーションでは、個人カットの展開前にいきなりMV公開という従来とは異なる手法で話題に。そしてデビュー曲なのに強さを一切押し出さず、軽やかさとアンニュイさで人々を魅了しました。ここ数年のK-POPとは全く異なるNewJeansという新しい音楽ストーリーは、どこか懐かしくて温かみを感じさせます。
リノベーションで変化する街
ニュートロブームは音楽やファッションだけではなく、飲食業界にまで広がっています。インスタ映え抜群のカフェは、平日も並ぶほどの人気だとか。古い建物をリノベーションしたカフェが、歴史深い建築物が並ぶ鍾路(チョンノ)や益善洞(イッソンドン)、乙支路(ウルチロ)エリアにどんどん誕生しています。
この地域は오래가게(オレカゲ)といって、“長く営業を続けている老舗店”も多いのですが、一方で都市再開発計画によって立ち退く店舗もあります。そうした再開発から逃れた電気街や印刷所、韓屋をリノベーションしてできたカフェやレストランが話題になっているのです。工業地帯の聖水洞(ソンスドン)も同様で、閉鎖してゆく工場跡を利用して改装し、カフェやギャラリーが集まる新スポットへと変化しています。アメリカNYのブルックリン地区を彷彿とさせる雰囲気に浸ってみてはいかがでしょうか。
おわりに
レトロブームは過去を懐かしむことをいうけれど、ニュートロブームは過去にひと手間加え、新しく変化させることで起きる現象なのかもしれません。日本でもここ数年、Z世代の若者を中心にレトロブームが起きています。
フィルムカメラやアナログ盤の人気、純喫茶のプリンやメロンソーダ、洋定食が写真映えすると人気だったり。こうしたブームの根底には懐かしさと安心感、そして現代社会にはない「不完全なもの」への憧れがあるともいわれています。日韓で共通の感性があるようですね。
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