K文学の大きな2つのジャンルとは

セウォル号以後文学とフェミニズム

K文学といえば、もともと文学好きの人が日本の小説では飽き足らず、韓国文学にまで手を伸ばしたという印象が強いかもしれません。もちろん、映画やドラマで韓国に興味を持った日本人がK文学の世界に流れてきたという見方もあります。現代においてよく読まれているK文学のジャンルは、セウォル号以後文学とフェミニズムの、大きく２つに分けられるでしょう。

セウォル号以後文学とは

2014年4月16日、韓国の仁川港から済州島へ向かっていた旅客船セウォル号が転覆・沈没する事故が起きました。修学旅行中の高校生を含む299名が死亡、5名が行方不明になるなど多くの犠牲者が出ています。その後の原因調査により、運行会社によるずさんな管理体制のみならず、政・官・財の癒着構造まで明らかになると、韓国社会に大きな衝撃を与えました。

韓国では、文学には社会の正しさを問う責任があるという考え方があります。読者も社会問題や政治批判といった時代性を求める傾向が強いようです。皮肉な話ではありますが、セウォル号事故以前は、何を表現すべきか悩む作家が多かったものの、事故をきっかけに一つの活路を見出せたといえるのかもしれません。この事故はこれまでの価値観を覆す大きなきっかけにもなったのです。

そうした中でセウォル号以後文学の代表といわれるのは、キム・エラン著『外は夏』。7つの短編のうちの『立冬』は、幼い息子を保育園の不慮の事故で亡くして時間が止まったままの夫婦を描いています。息子は亡くなったというのに保育園から誤送された木いちごエキスが爆発し、買ったばかりの中古マンションの壁紙を汚してしまうという、なんともいえない描写が胸に迫ります。しかし、壁紙を張り替えているうちに少しずつ２人の時間が動き始めることで、喪失から再生へという一縷の希望が垣間見えるところも事故犠牲者への強いメッセージを感じさせます。
その他、ファン・ジョンウン著『ディディの傘』、パク・ジォンチェ作『ヒキガエルがいく』もセウォル号沈没事故文学に関連する作品。日本語でも発売されているので、読んでみるといいでしょう。

K文学により新たな広がりをみせるフェミニズム

もう一つのジャンル、フェミニズムが大きく取り上げられる転換期となったのは、2015年。ある韓国女性が海外旅行先で中東呼吸器症候群（MERS）に罹り、そのまま韓国内に持ち込んだというデマが広がり、「自己中心的すぎる女」と大バッシングされました。そして翌年の2016年、ソウルの繁華街にある男女共用トイレで20代の女性が面識のない男に殺害された事件をきっかけに、抗議の声をあげた女性たちの運動が広まりました。

こうした流れを受けて、K文学におけるフェミニズムも新たな広がりを見せ始めます。男性中心の家族制度から脱却して、新しい形の家族を描いた作品や、格差や貧困、性的マイノリティへの抑圧を取り上げ、彼らの現状を伝える作品なども出てきました。

2018年末に日本語で翻訳出版され、映画化もされたチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』は、ワンオペ育児の末、アイデンティティに悩む女性が主人公という普遍的なテーマを掲げたことで、世界中の女性の共感を呼びました。“ひとつの小説が韓国を揺るがす大事態!”という宣伝文句は少々大袈裟すぎるかもしれませんが、これ以降韓国に対する日本の見方が変わったのは事実といえるかもしれません。

出典：筑摩書公式HP

2020年にはチェ・ウニョン著『わたしに無害な人』も発売。7篇のうちの『過ぎゆく夜』では、女手一つで育ててくれた母の死により疎遠になっていた姉妹が、5年半ぶりにソウルで再会する様子を描いています。5年半の間、姉はアメリカへ留学し、妹は結婚、そして離婚し、子供にも会えなくなっていました。そんな２人が小学校の運動会のときのことなど過去を回想しながら自分の生き方を省みるという小説です。

出典：亜紀書房公式HP

気に入った本があれば、まずは日本語に翻訳されたものを読んでから原書にチャレンジするというのもいいかもしれません。原書を読めるだけの韓国語力を身につけるには、韓国語教室に通って韓国人の先生に教えてもらうのが一番の近道になります。新大久保にある「ソウルメイト韓国語学校」なら韓流グッズなどの買い物にも寄れてとても便利。授業見学や無料体験レッスンも受け付けているので、まずはお問合せしてみてはいかがでしょうか。

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